現在の日本の刑法(第92条)には、外交上のトラブルを防ぐ目的で「外国の国旗を損壊した場合」を罰する法律(外国国章損壊罪)はありますが、「日本の国旗」を自分で燃やしたり汚したりしても罰せられる法律がありません。今回の自民党の動きは、「外国の旗を守る法律があるのに、自国の旗の尊厳を守る法律がないのは不均衡である」という主張から来ているものです。諸外国、特にG7や周辺国ではこの問題をどのように扱っているのか、法律の有無とその理由を見てみたいと思います。
G7各国の状況
G7(主要7カ国)の中でも、「国家の尊厳」を重んじて処罰する国と、「表現の自由」を優先して処罰しない国に真っ二つに分かれています。
【法律で罰則を設けている国】
- 🇩🇪
ドイツ
- 法律: 刑法第90条aにより、国旗や国家のシンボルを公然と侮辱・損壊する行為は処罰(懲役または罰金)の対象となります。
- 🇫🇷
フランス
- 法律: 2003年の法改正等により、公的機関が主催する行事において国旗や国歌を侮辱する行為に対して、罰金刑などが科されるようになりました。
- 🇮🇹
イタリア
- 法律: 刑法第292条により、国旗など国家の象徴を冒涜・損壊する行為が罰せられます。
【法律が存在しない(表現の自由として扱う)国】
- 🇺🇸
アメリカ
- 現状: 罪に問われません。過去には「国旗保護法」がありましたが、1989年の連邦最高裁で「国旗を燃やすなどの行為は、憲法修正第1条で保障された『表現の自由(政治的抗議)』に該当する」として違憲判決が下されました。
- 🇬🇧
イギリス / 🇨🇦
カナダ
- 現状: 国旗そのものの損壊を直接罰する法律はありません(他人の所有する旗を燃やせば器物損壊罪になりますが、自前の旗を燃やしても国家に対する犯罪とはみなされません)。表現の自由が広く保障されています。
その他の主な国の状況
- 🇰🇷
韓国
- 法律: 刑法第105条に「国旗・国章冒涜罪」があり、大韓民国を侮辱する目的で国旗や国章を損傷・除去すると処罰されます。
- 🇨🇳
中国
- 法律: 「国旗法」および刑法により、公共の場で国旗を燃やす、破る、汚すなどの行為は厳しく罰せられます。
国旗損壊を「犯罪」と定める2つの大きな理由
法律を設けている国々は、主に以下の理由から罰則を定めています。
1. 国家の尊厳と「統合の象徴」の保護 国旗は単なる布切れではなく、その国の歴史、国民の精神、そして国家そのものの象徴であるという考え方です。そのため、国旗を損壊することは「国家や国民全体への直接的な侮辱」であり、国としての尊厳を傷つける行為であるとみなされます。
2. 公共の秩序の維持(ヘイトや暴動の防止) 公の場で国旗を燃やしたり汚したりする行為は、それを見た多くの国民の感情を著しく逆撫でします。それが引き金となって暴動や深刻な対立、ヘイトスピーチなどの社会不安(治安の悪化)に繋がる危険性が高いため、秩序を守るために禁止されています。
日本での審議の行方が不透明な理由
日本においてこの法案の審議がすんなりと進まない最大の理由は、アメリカの最高裁判決の理由と同じく、「憲法第21条で保障されている『表現の自由』を侵害するのではないか」という強い懸念があるためです。国家の象徴を重んじる保守派の「国旗を守るべき」という思いと、リベラル派や法律家の「政治的な抗議活動(表現の自由)を法律や公権力で縛るべきではない」という思いが激しく対立するテーマであるため、法案成立までにはまだ多くの議論が必要とされています。
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