孤独島の白鳥

 

広瀬川の小さな中州、通称「孤独島」。そこには一羽の白鳥が住んでいました。名前はありません。ただ、川沿いを散歩する人々は彼を「孤独の白鳥」と呼んでいました。

 

白鳥はいつも一人でした。他の白鳥たちは群れを成して川を泳ぎ、空を舞っていましたが、彼はその輪に加わることはありませんでした。人々は「仲間外れにされているのだろう」「寂しいに違いない」と噂しました。しかし、白鳥自身はそんなことを気にしていませんでした。

 

孤独島は彼にとって特別な場所でした。朝日が川面を照らすとき、彼はその光の中で羽を広げ、静かに水をかきました。昼間は島の草むらで羽を休め、風に揺れる葦の音を聞きながら眠りました。夜になると、月明かりの下で川の流れを眺め、星空に思いを馳せました。

 

ある日、白鳥のもとに一羽のカモがやってきました。カモは白鳥に尋ねました。

 

「どうして君はいつも一人でいるの？寂しくないの？」

 

白鳥は少し考えてから答えました。

 

「寂しいかどうかは、見る人の感じ方次第だよ。僕はこの島が好きなんだ。ここには静けさがあり、自由がある。誰にも邪魔されず、自分のペースで生きられる。それが僕にとっての幸せなんだ。」

 

カモはその答えに驚きました。自分はいつも群れの中で生きてきたので、一人でいることが幸せだなんて考えたこともなかったのです。

 

「でも、誰かと一緒にいるのも悪くないよ」とカモは言いました。「たまには僕と一緒に泳いでみない？」

 

白鳥は少し笑って答えました。「それもいいかもしれないね。でも、僕はこの島が一番落ち着くんだ。だから、また遊びに来てくれると嬉しいよ。」

 

それからカモは時々孤独島を訪れるようになりました。白鳥とカモは一緒に泳いだり、島で羽を休めたりしました。白鳥は相変わらず一人でいる時間を大切にしていましたが、カモが来ると少しだけ賑やかになりました。

 

孤独島は、白鳥にとって平和と自由の象徴でした。そして、そこに訪れるカモとの交流は、彼の世界に新しい風を吹き込んでくれました。

 

孤独とは、必ずしも悲しいものではありません。それは、自分らしく生きるための選択肢の一つなのです。そして、時折訪れる誰かとの出会いが、その孤独をより豊かなものにしてくれるのかもしれません。