EL CAMINO DE SANTIAGO
はじめに:なぜ、私は10年間歩き続けたのか
2014年から2024年までの10年間で、私は8回、スペインとフランスにまたがる巡礼路「カミーノ・デ・サンティアゴ」を歩きました。その総距離は、数千キロに及びます。
期待に胸を膨らませる出発、息が切れるほどの上り坂、道に迷う不安、思いがけない出会いの喜び、そして、涙が出るほどの痛みを乗り越えた先に見える、言葉にならない絶景。
巡礼の記録 (2014-2024)
2014年:フランス人の道 (サン・ジャン・ピエ・ド・ポー → サンティアゴ 約800km)
すべてはここから始まりました。フランスの小さな町からピレネー山脈を越える、最も有名で伝統的なルートです。10kgのバックパックは、まさに「自分との闘い」。しかし、ふと顔を上げた時に、同じ道を歩む巡礼者たちの姿が見えた瞬間、この苦しい一歩が、1200年以上続く歴史の一部であることに気づきました。
2015年:ル・ピュイの道+フランス人の道 (ル・ピュイ → サンティアゴ 約1600km)
【本物の「しるし」を見分ける】
この年は、フランスの美しい村ル・ピュイから歩き始め、さらに長い距離に挑戦しました。フランス側の道では、巡礼路を示す「白と赤」の線が生命線です。しかし、道中には紛らわしい黄色や緑の印が無数にあり、それに惑わされて何度も道を間違えました。
2016年:北の道+銀の道 (約1800km)
【荒野で祈る、ということ】
この年は、スペイン北部の海岸線を行く風光明媚な「北の道」と、ローマ時代からの歴史を刻む「銀の道」という、二つの対照的なルートに挑みました。特に北の道は天候が厳しく、雨具が手放せない日々でした。
2017年:ジュネーブの道+ポルトガルの道 (約650km)
【ヨーロッパを繋ぐ、信仰の道】
スイスのジュネーブからフランスのル・ピュイまでを結ぶ道と、ポルトガルのポルトからサンティアゴを目指す、二つの道を歩きました。国境を越えても、巡礼者を見守る道の優しさと、そこに生きる人々の温かさは変わりませんでした。
2019年:プリミティボの道 (321km)
【最古の道と、嵐の中の気づき】
「最初の道」を意味するプリミティボは、巡礼路の中で最も古く、そして山深く険しいルートとして知られています。案の定、旅の後半は毎日が嵐のような雨でした。
2023年:マドリードの道 (マドリード → サアグン 約320km)
【大都市から始まる、内面への旅】
この年は、スペインの首都マドリードから北へ向かう道を歩きました。大都市の喧騒から出発し、やがて広大なメセタ(台地)の、どこまでも続く一本道へと入っていく。その風景の変化は、まるで自分の心が、外的世界から内的世界へと深く沈んでいく過程のようでした。
【歴史の道を歩く】
以前歩いた海岸ルートとは対照的に、今回は歴史的な町や村、そしてブドウ畑を抜けていく内陸の道を歩きました。きらびやかな海の景色とは違う、素朴で、人々の生活の息遣いが感じられる風景がそこにありました。
10年間、8回の巡礼を終えて思うのは、私はサンティアゴ・デ・コンポステーラという「目的地」に着いたのではなく、ただ「道を歩き続けてきた」に過ぎないということです。そして、その道は、これからも私の日常の中に続いています。
もし道に疲れ、一休みしたくなったなら、いつでもこのブログという「給水所」に立ち寄ってください。
あなたの旅路にも、豊かな恵みがありますように。
マラナタ!
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