【朝の光と共に走る——海に向かう道の魅力】

 


【朝の光と共に走る——海に向かう道の魅力】

 

 午前330分、まだ街は深い眠りの中。街灯が淡く舗道を照らす中、一人のランナーが静かに足を踏み出す。空気は依然として暑いが、湿気の多かった盛夏に比べれば随分と走りやすくなった。 きょうのコースは海沿い。数多くのルートを試した中で、この海へ向かう道は格別だ。潮の匂いと遠くから聞こえる波音、そして広がる水平線が、走る心と体を解き放つ。 

「一番気持ちよい道だけを走ればいいのでは」と尋ねる声もある。しかし、ランナーは言う。「さまざまな道を走ることで街の変化を感じられる。坂道や細道も、体と心を鍛える大切な時間になる」。

 足元の暗闇が徐々に色を帯び、東の空に朝の兆しが差し込む。街が目覚め、人々が通りへあふれ出す。出勤する人、新聞を取りに出る老人、学校へ急ぐ子どもたち。それぞれが家族や自分のために、一日の「戦い」に向かって歩んでゆく。

 その姿は、生きるために絶え間なく動く人間の営みそのもの。ランナーの呼吸と足音もまた、その大きな生命のリズムの一部となって、朝の街に溶け込んでいく。

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