古代編 — メソポタミアの干ばつ
王様(権力者)
今年も雨雲が来ない。
神殿の祭司たちは「神々が怒っている」と言う。
民は私を責め、反乱の気配も感じる。
水利工事に奴隷を増やそうとすれば、隣国は「戦の口実」にするだろう。
干ばつは、玉座の重みをさらに重くした。
農民
畑は砂色になり、麦は芽も出ない。
子どもたちは咳をし、妻は痩せてゆく。
年貢が払えなければ村ごと追放される。
「来年は雨が降る」…そう言い聞かせながら、小さな水瓶の底を覗く。
兵士
王の命で隣国の井戸を奪う遠征に行く。
のどが痛く、口の中は砂だけだ。
故郷には水を待つ家族がいる。
戦いに勝っても、生きて帰れる保証はない。
中世編 — 日本(鎌倉時代)の干ばつ
領主(武士)
今年は田からの年貢が半分も取れぬ。
将軍への献上も滞れば、領地を没収される。
村人を責めれば逃げる、黙っていれば城が空腹で滅びる。
雨乞いの祈祷に僧を呼んだが、空は灰色のまま。
村の百姓
去年も水が足りず、今年はさらにひどい。
子どもを一人、寺に預けることを妻と相談した。
生き残るために、家族を減らすことまで考えるなんて…。
小さな苗に竹の筒で水を注ぎ、ただ天を仰ぐ。
僧侶
領主の頼みで七日七晩雨乞いを行ったが、雨は来ない。
信心が足りぬと責められ、村人から「仏も見放した」と囁かれる。
心を鎮めながらも、己の祈りが届かない無力さに胸が痛む。
現代編 — 干ばつ地域に生きる人々
政治家
国際会議で「水の配分」を巡り、隣国と険悪になった。
市民からは「どうして海水淡水化プラントをもっと早く作らないのか」と責められる。
資金も人材も限界だ。
だが、水は待ってくれない。
都市の会社員
蛇口から水が出る時間は朝1時間だけ。
シャワーも洗濯も制限され、家族はみな苛立っている。
ネットでは「政府の失策だ」と非難が飛び交う。
けれど、文句を言っても空は青く乾いたままだ。
農場経営者
作付けしたレタスが半分以上枯れた。
契約したスーパーからの注文もキャンセルされた。
このままでは社員の給料も払えない。
ビニールハウスの中で、枯れた葉を踏みしめる音がやけに大きい。
未来編 — 宇宙コロニーでの干ばつ(2125年)
管理官
水循環システムの故障で、コロニーの水が急減している。
地球に救援を頼んでも通信には数時間、輸送には数日かかる。
住民は不安と怒りで集会所に押し寄せている。
あと何日、もたせればいい?
技術者
水分子再生器の部品が劣化している。
交換パーツは地球からの次の便まで届かない。
冷却液を流用すれば数日稼げるが、別の機器が壊れる恐れがある。
命を繋ぐか、システムを守るか──。
一般市民
子どもに「水はどこから来るの?」と聞かれて答えられなかった。
ガラス越しの宇宙の黒さが、急に心細く見える。
家族が眠る横で、小さな水パックを両手で抱えた。
こうして見ると、同じ「干ばつ」という状況でも、立場や時代によって悩みが全く異なることが分かります。ただし共通しているのは、「命や大切なものが失われる恐れ」に直面しているという点です。
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