一本のろうそくから始まるクリスマスの物語

 


一本のろうそくから始まるクリスマスの物語

そのころ、皇帝アウグストゥスから全領土の住民に、登録をせよとの勅令が出た。これは、キリニウスがシリア州の総督であったときに行われた最初の住民登録である。人々は皆、登録するためにおのおの自分の町へ旅立った。ヨセフもダビデの家に属し、その血筋であったので、ガリラヤの町ナザレから、ユダヤのベツレヘムというダビデの町へ上って行った。身ごもっていた、いいなずけのマリアと一緒に登録するためである。ところが、彼らがベツレヘムにいるうちに、マリアは月が満ちて、初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである。その地方で羊飼いたちが野宿をしながら、夜通し羊の群れの番をしていた。すると、主の天使が近づき、主の栄光が周りを照らしたので、彼らは非常に恐れた。天使は言った。「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである。」(ルカによる福音書2112節)

 


一本のろうそくに、静かに火が灯されます。その小さな光が、礼拝堂の厳かな闇をそっと押し返し、私たちの顔を柔らかく照らし出すように、クリスマスは始まります。静寂の中に浮かび上がるその光は、まるで神様からの「今年もよく頑張ったね」という優しいまなざしのようです。

 


一年で最もきらびやかな季節と言われるクリスマスですが、その物語の始まりは、決して華やかなものではありませんでした。宿屋にも泊まれなかった若い夫婦と、飼い葉桶に眠る小さな赤ちゃん。そこには、豪華な装飾も、盛大な祝宴もありません。ただ、神様の約束を信じて歩んだ人々の、どこまでも謙遜で、ささやかな「手作り」の物語がありました。神様がこの世界に贈ってくださった最初のクリスマスプレゼントは、完璧に磨き上げられた宝石ではなく、生まれたばかりの、か弱く、温かい命でした。その知らせを最初に受け取ったのも、王や学者ではなく、夜の野原で羊の番をしていた、名もなき羊飼いたち。彼らは専門的な知識も、立派な地位も持っていませんでした。ただ、夜空に輝く不思議な星を見上げる素朴な心と、天使の歌声に耳を澄ます静かな時間を持っていたのです。

 


その姿は、現代を生きる私たちにも重なります。忙しさに追われ、情報に溢れた日々の中で、ふと立ち止まり、心の奥にある静けさに耳を澄ますこと。それは、羊飼いたちが星に導かれたように、私たちもまた、神様の光に導かれる瞬間なのかもしれません。クリスマスに必要なのは、完璧な準備でも、特別な知識でもありません。大切なのは、心の中に小さな空間をつくり、そこに神様からの光を迎え入れること。初めて教会に来られた方も、毎年この日を待ち望んでいた方も、心に様々な荷物を抱えている方も、すべての「あなた」を、この物語は歓迎しています。聖歌の調べに導かれ、ろうそくの光に照らされながら、私たちは共に救い主の誕生を祝いましょう。その光が、あなたの心の内に温かい希望となり、新しい年へと続く道を、そしてこれからの人生の旅路を、優しく照らし出してくれますように。

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