久しぶりに顔を見せてくれた、金曜日の青空。
いつもの朝ランもいいけれど、今日は少しだけ気分を変えて、あの長い階段へ向かうことにしました。緑の中に続く、大年寺の255段の石段です。
心の中の僕は、過去の栄光にすがるように「さあ、前みたいに20往復だ!」と息巻いていました。目標を立て、それを乗り越えることに、僕たちは喜びを感じますから。
けれど、一歩、また一歩と、自分の体の重みを空へ持ち上げるたびに、もう一人の自分がささやきかけてきます。僕の体が、汗を通して、少し震える膝を通して、必死に伝えてくるのです。
「おい、今日は5往復で十分じゃないか? 無理はしなくていい」と。
かつての僕なら、この声に耳を貸さず、「根性だ!」と自分を追い込んでいたかもしれません。そして、途中で挫折して、自分を責めていたでしょう。
でも、今日の僕は違いました。
体のその正直な叫びに、素直に「わかったよ」と頷いたのです。
実は、今日は本格的なトレーニングのつもりがなく、散歩のつもりでラフな普段着のまま。だから、5往復を終える頃には汗でびっしょりです。でも、なんだかそのことが可笑しくて、清々しくて、思わず笑みがこぼれました。
汗を拭いながら見上げた空は、どこまでも青く澄み渡っていました。
目標の回数には、まったく届かなかった。
でも、僕の心は不思議なほどの達成感と、静かな喜びに満たされていました。1時間の階段トレーニングは、僕に大切なことを教えてくれました。
私たちはつい、頭で考えた「理想」や「目標」という名の鎧を着て、自分をがんじがらめにしてしまいます。「こうあるべきだ」「もっと頑張らなくては」と。でも、本当に大切なのは、過去の自分や誰かと競争することではなく、「今の自分」の声に、そっと耳を澄ますことなのかもしれません。
今日の体は、昨日の体とは違う。それでいいのです。
今日のあなたにできる、その一歩を踏み出すこと。
その一歩が、どんなに小さく見えても、未来のあなたへと続く、何よりも尊く、勇気に満ちた一歩なのです。
あなたの心と体は、人生で最も信頼できる、正直な友人です。
その声を聞き逃さないでください。
空が晴れたなら、完璧な計画なんてなくても、ふらりと外へ出てみませんか。
きっと、最高の「今日」が、あなたを待っていますよ。
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