動物たちが見つめた聖夜

 


動物たちが見つめた聖夜──沈黙の中のまなざし

それは、いつもと変わらない夜になるはずだった。 乾いた藁の上で、牛はゆっくりとまぶたを閉じ、 ロバは壁際で静かに呼吸を整えていた。 羊たちは寄り添いながら、冷たい夜風をしのいでいた。

けれど、その夜は違っていた。 扉が軋む音とともに、見知らぬ人々が入ってきた。 若い夫婦。 疲れた顔をしていたが、どこか光を帯びていた。 そして、まもなく── 藁の上に、ひとりの赤ん坊が寝かされた。

牛は、鼻先をそっと近づけた。 ロバは、耳をぴくりと動かしながら、じっと見つめた。 羊たちは、静かにその場に身を伏せた。

「この子は、誰なのだろう?」

言葉は交わさずとも、動物たちは感じていた。 この夜、何かが始まったのだと。 この小さな命のまわりに、 これまでに感じたことのない温もりと静けさが広がっていた。

やがて、外から足音が聞こえた。 羊飼いたちが、息を切らしてやってきた。 彼らもまた、何かに導かれるようにして、 この小さな家畜小屋にたどり着いたのだという。

「天使が現れて、救い主が生まれたと告げたんだ」 「この子が、その方だと

牛は、ロバと目を合わせた。 羊たちは、そっと鳴いた。 彼らには、言葉はなかったけれど、 その場に満ちる光と静けさが、すべてを物語っていた。

夜が明ける頃、 空にはまだ星が瞬いていた。 けれど、家畜小屋の中には、 それ以上にまばゆい光があった。

それは、神が人となって来られた夜。 誰にも気づかれず、誰にも歓迎されず、 けれど、動物たちが最初にその誕生を見つめた夜

彼らは何も語らなかった。 ただ、そこにいて、 その命のぬくもりを、 その静かな奇跡を、 全身で受けとめていた。

クリスマスの終わりに──

私たちもまた、 この一年の終わりに、 静かに立ち止まりたいと思います。

言葉では語り尽くせないことが、 人生にはたくさんあります。 けれど、沈黙の中で見つめること、感じること、祈ることは、 動物たちがそうであったように、 私たちにもできるのです。

神は、静けさの中に来られました。 だからこそ、私たちの心の奥深くにも、 そっと訪れてくださるのです。

この聖なる夜、 あなたの心にも、 神の平和と希望の光が静かに灯りますように。

メリークリスマス。 そして、新しい年に向かって、 希望とともに歩み出せますように。

 

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