説教題:誰でも私の下に来なさい。休ませてあげよう
聖書:マタイによる福音書 11章28~30節
全て重荷を負って苦労している者は、私の下に来なさい。あなたがたを休ませてあげよう。私は柔和で心のへりくだった者だから、私の軛を負い、私に学びなさい。そうすれば、あなたがたの魂に安らぎが得られる。私の軛は負いやすく、私の荷は軽いからである。」
皆さんは夜、ふとスマートフォンを眺めていて、胸がぎゅっと苦しくなることはありませんか。
Instagramには、友人たちの充実したインターンや楽しそうな写真。 Xを開けば、同世代が資格を取り、起業し、内定をもらったという情報が次々と流れてきます。
気づけば、画面のバッテリーは赤く点滅しています。 けれど、本当に限界に近づいているのは、皆さん自身の「心のバッテリー」なのかもしれません。
大学生という時期は、世間からはよく「人生の夏休み」だとか「一番楽しい時期だ」と
言われます。でも実際のところ、皆さんの毎日はそんなに気楽なものではないはずです。
「今のうちに資格を取らなきゃ」 「自己分析をして、就活でアピールできるエピソードを作らなきゃ」 「空気を読んで、うまく人間関係をこなさなきゃ」
つまり、「社会から認められる『何者か』にならなきゃいけない」という見えないプレッシャーに、常に背中を押され、追い立てられています。大学のゼミや友人関係の中で、「全然大丈夫」「充実してるよ」という透明な仮面を被りながら、心の底では「自分だけが置いていかれるのではないか」「自分には価値がないのではないか」と怯えている。そんな孤独な戦いをして、心が擦り切れている方が、今この場にもいるかもしれません。
そんな「休むこと」すら許されないような現代の空気の中で、聖書の言葉は、社会の常識とは全く違う次元から皆さんに語りかけます。今日の聖書でイエス・キリストはこう言われました。「疲れた者、重荷を負う者は、誰でも私の下に来なさい。休ませてあげよう。」
ここでイエス様が言っている「重荷」とは、単なる学業やバイトの物理的な疲れだけではありません。「自分の存在価値は、自分の努力と成果で証明し続けなければならない」という、この社会が皆さんに背負わせている呪縛のことです。
就活のエントリーシートには、あなたの「強み」や「会社に貢献できる理由」をびっしり書かなければ、選考を通過することはできません。現代社会は常に、「あなたにどんなメリットがあるか」「いかに生産的か」で人を評価します。だから私たちは、休む事に罪悪感を覚えます。「休んでいる間に、誰かに差をつけられてしまう」「何も生み出していない時間は無駄だ」と思い込まされているのです。
しかし、イエス様は「もっと効率よくタスクをこなす方法を教えよう」とは言いません。「メンタルを強くして、プレッシャーに打ち勝ちなさい」とも言いません。ただ一言、「疲れているなら、私の所に来て休みなさい」と言われます。キリスト教の信仰において「休む」とはサボる事でも、逃げる事でもありません休む事、それは「自分の力で自分の価値を証明しようとする、そのしんどい手を一度ピタリと止めて、神様に自分を丸ごと委ねる」という、最も勇気ある決断なのです。
イエス様は先ほどの言葉に続けて、「私の軛を負い、わたしに学びなさい」と語られます。軛とは、二頭の牛を並べて農作業をするために、首と首を繋ぐ木の枠のことです。 当時、力の弱い若い牛は、経験豊かで力強い親牛とペアにされました。実際の重い荷物を引き、進むべき方向を決めているのは、全て隣にいる力強い親牛です。若い牛はただその親牛の横で、歩幅を合わせて歩いていればよかったのです。
イエス様は、あなたに「一人で人生という荒野を開拓して、自分を証明しろ」とは言われません。「あなたのプレッシャーも、将来への不安も、私が一番重い部分を背負うから。あなたは一人じゃない。ただ私の横にいて、私と歩幅を合わせて歩きなさい」と招いておられるのです。
皆さんの本当の価値は、GPAの数字や、持っている資格の数や就職先の企業の知名度などで決まるものではありません。天地を造られた神様が、「あなたは私の目には高価で尊い。私があなたを愛している」と宣言しておられます。イエス様がご自分の命を捨てるほどにあなたは愛され、価値ある存在なのです。
社会からの評価はどうであれ、神様からはすでに、あなたの存在そのものに対して「無条件の合格通知」が出されています。もう、焦って無理に「何者か」になろうとしなくて大丈夫です。そして今日という日は― 社会の評価という重荷をいったん下ろし、 神様の愛の中で心を整え、力を受け取る“新しい一週間のスタートライン”です。
休むだけで終わるのではありません。 神様の愛に根ざして、もう一度立ち上がり、あなたらしいペースで、一歩を踏み出していくための時間です。等身大のあなたのままで、 横を歩いてくださるイエス様と共に、 この一週間を歩み始めていきましょう。
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