朝ラン21キロ完走。
夜明け前の静寂を切り裂くように、アスファルトを叩く足音が響いた。吐く息は白く、辺りはまだ薄暗く、街の輪郭がぼんやりと浮かび上がる。いつもの朝のランニングコース。今日は少しだけ違う景色を求めて、いつもより遠くまで足を伸ばしてみた。
道路脇の草むらに、何かが動いた。目を凝らすと、それは狐だった。赤褐色の毛並み、ピンと立った耳、そしてこちらをじっと見つめる、知的な瞳。街の喧騒から逃れたように、静かに佇むその姿は、まるで神話の生き物かのように神秘的だった。
息を呑み、スマートフォンを取り出した。この美しい瞬間を記録に残したい。シャッターボタンを押した瞬間、信じられないことが起こった。閃光が走り、狐の姿が光に包まれた。そして、その光は、まるで夜空に描かれた一筆書きのように、流れるような軌跡を描きながら天高く昇っていき、やがて星々の間に溶けるように消えていった。
残されたのは、狐が立っていた場所の静寂と、胸に広がる不思議な温かさ。まるで、自然からの贈り物を受け取ったような、そんな感覚だった。その日から、私の朝のランニングは、特別な意味を持つようになった。それは、日常の中に潜む奇跡を、そして自然の神秘に触れた瞬間を、思い出させてくれる時間となったのだ。
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