「失うには惜しい場所」をつくる――あるレジ打ちの15億円と、私たちの社会の定規
今日の仙台は、空気が肌に張りつくような湿度で、歩くだけで体の内側までじんわりと湿り気が入り込んでくるような一日でした。 そんな重たい空気の中、私は早朝5時ごろ、近くの西友へ買い物に出かけました。 店内では、エプロン姿のスタッフの方々が黙々と準備を進めていました。 その姿を目にすると、いつも思わされます。
この社会の土台を支えているのは、華やかなオフィスの光ではなく、こうした現場で働く人々の確かな手仕事なのだと。しかし同時に、胸の奥に静かな問いが浮かびます。 私たちの社会は、彼らの「熟練の価値」を正しく測れているだろうか。
アメリカから届いた、ある「レジ打ち」の驚くべき物語
最近、ウォールストリートジャーナル(WSJ)が報じたコストコの雇用改革の記事を読みました。
そこには、日本の常識では想像もつかない「働く人の尊厳」が描かれていました。アリゾナ州の店舗で40年間レジ一筋で働くトニ・バザールさん。
彼の時給は32.90ドル(約5,000円)。 さらに退職年金口座には100万ドル(約1億5,000万円)以上が蓄積されているといいます。なぜ小売業でこれほどの待遇が可能なのか。
そこには「効率賃金理論」と「グッジョブ戦略」という、経済学と経営学の知恵が働いています。
- 市場平均より高い賃金を払うことで優秀な人材を引き留める
- 「失うには惜しい職場」を提供し、従業員の自発的な成果を引き出す
- 離職率を劇的に下げ、採用・教育コストを削減する
事実、コストコの離職率はわずか7%。 一般的な小売業が50%を超えることもある中で、これは驚異的な数字です。 熟練したベテランは1時間に70人もの会計をミスなくこなし、顧客の信頼を勝ち取ります。 結果として売上は伸び、株価は2008年から23倍以上に跳ね上がりました。
日本の現場を見つめ直す――「コスト」という名の定規
このニュースを読むと、日本の現場の姿が胸に浮かびます。
都市部でも時給1,000〜1,300円。
地方では最低賃金近辺。 何十年勤めても、時給が数百円上がる程度。 「時給5,000円」や「老後を支える退職金」といった世界は、ほとんど存在しません。日本の多くの企業は、いまだに労働力を「コスト」としてしか見ていないのではないか。
その定規を当て続けた結果、私たちが手にしたものは──
- 慢性的な人手不足
- 絶えない離職の連鎖
- 「どれだけ頑張っても報われない」という静かな絶望
短期的には帳尻が合っても、長期的には社会の生命線である「現場の力」をすり減らしてしまうのです。
人を「宝」として数える知恵
聖書は、労働と報酬についてこう語ります。
「働く者が報酬を得るのは当然である。」(Ⅰテモテ5:18)
神様の定規は、人を「安く使い倒せる労働力」として数えません。 一人ひとりの尊厳を認め、その汗にふさわしい敬意と報いを求めます。
コストコが示したのは、 「人に投資することは損失ではなく、最大の利益を生む」 という価値の転換でした。人を大切にするからこそ現場に平和が生まれ、信頼が育ち、それが最高のサービスとなって社会に還っていくのです。
効率と損得の風が吹きつける今の社会だからこそ、 私たちは「人を大切にする」という原点に立ち返る必要があります。
職場でも、地域でも、家庭でも、 そこを「失うには惜しい場所」にしていくこと。 それが、私たちの明日を温かく照らす光になると信じています。
湿気の重い一日でも、私たちは歩き続けます。生きることです。最後まで生き続けることです。・・・自分はもう寝る時間になりますが・・・・・とっくにノアは夢の中です。
今日も、共に前進です。
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