家族とは、神様が私たちに与えてくださった、最も小さく、そして最も尊い共同体です。しかし、身近な存在だからこそ、私たちは時に甘え、言葉を尽くすことを忘れ、すれ違ってしまうことがあります。
それは、ルールがないからではなく、互いを思いやる「心の指針」が、日々の忙しさの中で見えにくくなってしまうからかもしれません。
ここでは、私たちが家庭という港で、より穏やかに、そして豊かに過ごすための「十の戒め」を、私自身の経験も交えながら分かち合いたいと思います。これは厳しい規則ではなく、愛を育むための、知恵の分かち合いです。
家族のための十戒
第一条:憶測で判断せず、言葉で伝えなさい。
「きっとこう思っているに違いない」「なぜ分かってくれないんだ」という勝手な想像は、すれ違いの始まりです。頭の中で考え込まず、自分の気持ちや考えを、正直に、そして優しい言葉で伝えましょう。
例: 相手の帰りが遅い時に、「私のことなどどうでもいいんだ!」と怒るのではなく、「何かあったのかと、とても心配だったよ」と、自分の感情(心配)を伝えましょう。
第二条:まず、相手の話を最後まで聴きなさい。
自分の意見を言いたい気持ちを少しだけ抑えて、まずは相手の言い分に、心と耳を傾けましょう。「聞く」のではなく「聴く」姿勢が、相手の心を開き、信頼を育みます。
第三条:「ありがとう」という感謝を、惜しみなく表しなさい。
家族の間では、「やってもらって当たり前」という空気が生まれがちです。しかし、どんな些細なことにも「ありがとう」と口に出して伝える習慣が、家庭を温かい感謝の心で満たします。
第四条:過ちを赦し、昨日のことを今日まで持ち越さないようにしなさい。
誰にでも過ちはあります。相手の失敗をいつまでも責め続けるのではなく、赦し、水に流す勇気を持ちましょう。朝が来るたびに、新しい気持ちで関係をスタートさせるのです。
第五条:相手を変えようと願う前に、まず自分が変わる努力をしなさい。
「相手がこう変わってくれれば…」と期待するよりも、まず自分が変わる方が、はるかに早く、そして確実に平和が訪れます。
例: 私は食器をすぐに洗うタイプですが、妻は後でまとめて洗うタイプです。以前はそれが不満でしたが、考え方を変え、「彼女はやらないのではなく、後でやるだけだ」と、その習慣を受け入れることにしました。私が変わったことで、この件でのぶつかり合いは無くなりました。
第六条:感情が高ぶっている時には、重要な話し合いを避けなさい。
怒りや悲しみに心が支配されている時に発した言葉は、ナイフのように相手を傷つけます。まず「今は話したくない」と伝え、お互いが冷静になれる時を待つ知恵を持ちましょう。
第七条:共に笑い、楽しい時間を分かち合うことを、怠らないようにしなさい。
家族は、問題解決のためだけのチームではありません。一緒にテレビを見て笑ったり、散歩をしたり、美味しいものを食べたり。何気ない楽しい時間の積み重ねが、困難な時を乗り越えるための強い絆となります。
第八条:譲れない一線については、その理由と共に、誠実に伝えなさい。
何でも我慢すれば良いわけではありません。どうしても譲れない大切な価値観や境界線については、「なぜなら、私はこう考えているからです」と、その理由を添えて、誠実に話し合いましょう。
第九条:家族であっても、一人の人間として、その人格と価値を尊重しなさい。
親子であれ、夫婦であれ、相手は自分の所有物ではありません。一人の独立した人間として、その意見、感情、そして価値観を尊重する。その基本的な姿勢が、すべての土台となります。
第十条:そして、これらすべてを、愛をもって行いなさい。
結局のところ、これら九つの戒めも、根底に「愛」がなければ、ただの冷たいルールになってしまいます。相手を大切に想う心、幸せを願う心。その愛をもって、日々の関係を築いていきましょう。
完璧にできる人など、どこにもいません。
まずはこの中から一つでも、今日意識して過ごしてみませんか。皆様の家庭に、神様からの豊かな愛と平和が、さらに満ち溢れますように。
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