デジタル書庫 ―― 祈りの旅路

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2026年5月27日水曜日

暗闇をひらく午前三時の足音

 


暗闇をひらく午前三時の足音 ―― 名もなき誠実さと、今日も続く私たちの路

夜明け前の静寂と、隣の建物の小さな熱気

深い夜の底を歩くような、愛犬ノアちゃんとの散歩。ひんやりとした空気を肺いっぱいに吸い込み、静まり返った街から無事に帰宅しました。

時計の針が午前三時を回る頃、世界はまだ深い眠りの中にありますが、我が家の隣の建物の1階だけは違います。そこには人々が集まり、慌ただしくも確かなリズムで動き出す姿が、今日も私の目に飛び込んできました。 彼らは、私たちの街の朝を形作る、新聞配達員の方々です。その顔ぶれは実に様々です。これからの未来を背負う若者から、人生の年輪を深く刻んだご年配の方まで。一人ひとりが、決して口には出さない「それぞれの思い」や「背負うべき生活の重さ」を胸に秘めながら、黙々と新聞の束と向き合っているのです。

 


雨の日も雪の日も、指定された場所へ

ランニングの途中、花壇の地域を担当する新聞配達所の前を通りかかったとき、ふと一枚の貼り紙が目に入ったことがあります。 そこには「75歳まで働けます。」と書かれていました。隣の配達員の方々の姿を数年にわたって見つめ続けてきた私には、その言葉の奥にある「重み」が痛いほどよく分かります。この仕事は、ただ「朝が弱い人には絶対に出来ない」という生易しいものではありません。 叩きつけるような雨の日も、凍えるような雪の日も、息苦しいほどの暑い日も、骨身に染みる寒い日も。彼らは決まった曜日の午前三時になると、一人、また一人と集まり、ただ黙々と、自分の担当する地域へと重い新聞を携えて闇の中へ出発していくのです。

華やかなスポットライトが当たることはありません。誰かから直接「ありがとう」と拍手をもらうことも少ないでしょう。しかし、彼らが冷たいペダルを漕ぎ、一軒一軒のポストに「今日」という日を届けてくれなければ、社会の朝は始まりません。そこにあるのは、どんな不条理な天気であっても自分の持ち場から決して逃げ出さない、人間の極めて気高く、美しい「誠実さ」そのものです。

 


見えない労苦を見つめる、神のまなざし

私たちは時折、自分の抱える重荷や、誰にも評価されない日々の単調なルーティンに虚しさを覚え、「こんなことを続けていて何になるのだろう」と足が止まりそうになることがあります。しかし、人々が寝静まった午前三時の暗闇の中で、黙々と新聞を配る彼らの背中を想うとき、私たちの魂は静かな慰めと勇気を受け取ります。誰も見ていない場所での労苦を、決して見落とさない方がおられるからです。

「何をするにも、人に対してではなく、主に仕えるように、心から行いなさい。」(コロサイの信徒への手紙 323節)

神様は、私たちがどれほど大きな成果を上げたかではなく、与えられた今日という「担当地域」に、どれほど誠実に足を運んだかを、その温かいまなざしでじっと見つめておられます。午前三時の配達員も、実習に向かう学生も、そして教区総会へと向かう牧師も、神の御前においては等しく、尊い「今日を運ぶ者」なのです。

 


サバの記憶と、愛を仕込む夕暮れ

今日、あなたはどんな思いを胸に秘めて、自分の持ち場へと出かけていくのでしょうか。

私にとっての今日は、教区総会の二日目という、精神的にも大きなエネルギーを必要とする日です。しかし、私の心には今、ひとつの小さな、しかし極めて強固な「楽しみ」の錨が下ろされています。

それは、昨日食べた「焼きサバ定食」の、忘れられない味です。 数年ぶりに味わった、あのお店での焼き魚の豊かな風味。今日もまた、あのお店ののれんをくぐり、あのサバ定食を食べようと固く心に決めています。大きな議論や公務の合間に、自分自身を労わり、命の味をじっくりと咀嚼する時間を持つこと。それもまた、自分の路を長く歩み続けるための、大切な信仰の知恵なのです。

  • 名もなき誠実さを尊ぶ: 誰かの目につかなくても、雨の日も風の日も持ち場を守る自分自身の歩みを、誇り高く肯定する。
  • 小さな喜びを予約する: 「今日のお昼はあれを食べよう」というささやかな楽しみが、張り詰めた心に深い余白とゆとりを生み出す。
  • 帰るべき場所へ愛を届ける: 大きな公務を終えたあとは、ロピアで丁寧に食材を選び、待っている家族のために美味しい夕食を作る。その日常の営みこそが、世界で最も確かな平和の砦となる。

 


それぞれの「今日」を携えて

隣の建物からは、今日も新聞を積み込む微かな音が聞こえてきます。彼らはすでに、それぞれの担当地域へと出かけていきました。

私たちもまた、自分の心の中に「誠実さ」という新聞を携えて、今日という日のスタートラインに立ちましょう。 総会の重責も、焼きサバ定食の香ばしい喜びも、そしてロピアの袋に詰まった家族への愛情も、すべてを等しく大切な荷物として背負いながら。

暗闇をひらいてくれた誰かの足音に感謝しつつ、確かな足取りで、目の前の一歩を力強く踏み出していきましょう。

今日も、共に前進です。

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